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社債投資家を保護するためには、むやみt化をすすめではならない」といった議論がかつてはよく聞かれた。 しかし「有担保原則の緩和は、社債のリスクを高める」とする主張である。
「無担保社債は投資リスクが高い」と、単純にいうことができるのうか。 これは、「担保がついているから安全」というイメージが妥当かどうかを検討する作業でもある。
これを日米の実際のケースでみたのが次頁の(図表4-1)および(図表4ーのである。 (図表4-1)は、担保付社債と無担保社債が共存していた、わが国の昭和初期の恐慌時に、償還不能ないし利払不能におちいった社債を、担保付と無担保の別に分けたものである。
たしかに、債務不履行におちいった発行会社数においても、元利支払不能となった社債の発行総額においても、無担保社債の方が大きい。 しかし、元利支払不能社債の発生率では、無担保社債の7%に対して、担保付社債は*とはるかに高い(2)。
すなわち、「無担保=担保がないから危険」ということにはならないのである。 無担保発行が普通であった当時は、特に信用力の低い会社のみが担保付で社債を発行していた(3)。

したがって、担保付社債に支払不能発生率が高かった理由は、そもそも、一般の信用を得られないほどに発行会社の業績が安定感を欠いていたことにある。 担保がついていたこととは直接の関係はない。
米国においても、通常、信用の高い会社が無担保債を発行することができ、そうした社債は支払不能となる確率が低かったのである(4)。 社債発行時に担保をつけるかどうかは、支払不能におちいる可能性を減じることと直接の関係はない。
日米2つのケースを参照して、担保の有無と社債の支払不能の発生をあえて関係づけようとするならば、「無担保債の方が、支払不能におちいることが少なくて安全である」といえないこともない。 3担保の果たす役割は何か担保がついていることが、社債投資家にメリットを与えるのは、発行会社が債務不履行におちいったあとである。
本節の冒頭で明示した社債の安全性の測定の手順でいうならば、第2段階においてはじめて、担保の有無が直接の意味をもってくる。 担保の存在が、社債投資の安全性の何らかの支えとなりうるのは、会社更生法等の倒産手続きにおいてということになる。
ただし、この時点で、社債投資家は、保有している社債が担保付であれ、無担保であれ、すでに元利支払いの確実性を侵されている。 たとえば、会社更生法の適用があると、財産保全のために社債の元利支払いは停止してしまう。
社債投資家としては、このときには、もはや当初の資金運用計画を変更せざるをえなくなっているのである。 しかも、会社更生法のもとでは、担保権の実行は停止される。
したがって、社債に担保がついていたとしても、社債権者はただちに元本の回収ができるわけではない。 更生手続きが開始されたあとに、担保付社債の場合は、更生担保権となり、ここではじめて、更生慣権となる無担保社債よりも弁済が有利になる。
しかし、「有利」とはいえ次の諸点を考慮せねばならない。 (1)担保付社債であったとしても、元本の回収には長い時間がかかる。
(2)担保付社債は無担保社債に比べて回収率が高い可能性が大きいものの、常に全額回収されるとは限らない。 さて、現実の社債格付けにおいては、同じ会社が同時に担保付社債と無担保社債とを発行している場合、その両者の格付けに差がつくかどうかということが問題になる。

また、担保付社債はないとしても、担保付銀行借入等の担保付債務が多額にある場合には、無担保社債を始めとする無担保債務を担保付債務に対してどうみなすかが問題になる。 そこで、どのような企業が多額の担保をとられているかを見てみよう。
収益力の高い企業、たとえば、格付けランクが高い企業の場合には、債務に担保がとられるケースは極めて少ない。 「三園格付け」ではA(シングルA)以上の上位3ランクの格付けの企業において債務に多額の担保がとられているケースは、資金調達の制度上、担保が要求されているものを除くとほとんどない。
BBB(トリプルB)以下の低い格付けランクの企業の場合には、ランクが低くなるほど、債務に担保を付されるケースが増える。 たとえば、同じく「三園格付け」対象企業において担保付債務が多い企業数はBBBの企業全体の約2割に過ぎないがBBでは4割Bおよびcccでは8割となっている。
格付けの水準が低い、すなわち、支払不能におちいる可能性が大きい場合にのみ、担保の有無が何がしかの意味をもっ。 (1)担保付債務は優先債務とみなすことができる。
(2)無担保債務の場合には、弁済順位においてそれに優先する担保付債務の額が大きいかどうかにより、劣後債務とみなすべきか、優先債務とみなすべきかが決まる。 担保付債務には、担保付社債のみならず、担保がついている長短借入金を加えねばならない。
会社清算時には、更生担保権(会社更生法で処理をする場合)となる担保付債権に比べて、更生債権となる無担保債権の弁済率はかなり低い。 この回収可能性の差異を考慮に入れると、会社が事実上倒産して債務不履行になる可能性が比較的大きい場合には、最優先債務の格付けランクよりも、劣後債務の格付けランクは低くなる。
(物的担保の有無は、企業の倒産後、いわば死後の世界で効力を発する)社債が債務不履行におちいるかどうかは、社債に担保が付いているかどうかと直接の関係はない。 担保は、倒産した後に債務の弁済順位を決めるときに意味をもつだけである。
4「担保留保」は担保付とみなせるか。 無担保社債の格付けの際には、それに優先する担保付債務の範囲を限定せねばならない。
その場合に問題になるのが、銀行貸出において課せられている担保提供の義務をどう評価するかということである。 すなわち、銀行借入の際に借り手が銀行に出す銀行取引約定書の第4条(以下「銀取4条」とする)に定める「担保留保」の実質を「担保付」と同等の効果をもつものとみなすかどうかである。

ここでは「担保留保」は、少なくとも法律上の「担保付」ではないことを、まず第1に指摘できる。 第2に、銀行にとって「担保付」で貸すか「無担保(=銀取4条下で担保留保される)」で貸すかの差は、かなり大きいと考えられる。
銀行は無担保で貸し出すにあたっては「この貸出先ならば、無担保でも安心だ」という了解のもとで貸し出しているのはまちがいない。 都市銀行の貸出先と担保の有無をみると、たとえ、貸出先がいわゆる旧財閥系などの企業集団を同じくするグループ企業であったとしても、業績の悪化している企業からは、貸出にあたって担保を確実にとっているのがわかる。
すなわち、銀行は銀取4条の存在があるとしても、貸出先に不安があれば担保付でしか貸さないのである。 第3に、銀取4条が発動された例、すなわち貸出途中において無担保貸出が担保付に変わった例は、ある程度の規模以上の会社については見当たらない。
その発動は、法律上の効力という点でも、現実の問題としても、極めて困難だといわれている。 こうした状況を考え合わせると、銀取4条の「担保留保」は、実務上は「無担保」に極めて近いといえる。
すなわち、(1)法律上は「無担保」であり、(2)建前上は「担保付」と同等だとされているが、(3)実務上は「無担保」に極めて近いとみることができる。 1989年3月、R事件の展開のなかで、R社が発行していた「留保物件付無担保転換社債」に、担保がつけられるというできごとがあった。

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